北海道羅臼、斜里編
ネットワーカー・沖縄支部 vol.02
町田恵美(フリーランスエデュケーター/コーディネーター)
photo by Futoshi Miyagi
北海道に着いたときから持ってくる服を間違えたという感じはあった。四月下旬、沖縄はうりずんと呼ばれ梅雨入り前の初夏の気候で、事前に調べなかったのかと言われそうだが、パソコンに表示される一桁の気温に馴染みがない私には現地の様子が全く掴めていなかった。追い打ちをかけるかのように滞在中、まさかの雪に見舞われ、結局服を買い足すことになる。
雪で一日前に開通したばかりの知床横断道路が閉鎖され、下道を通り羅臼(らうす)に向かう。以前、沖縄で展示会をしたことのある北海道出身のアーティストが観光協会の活動の一環として新しいスペースを立ち上げる準備をしていると聞き、せっかくなので見に行こうと思ったのだ。ただ、彼女は別用で不在にしており、錠の外された扉を開け、家主不在で見学をした。ユースホテルを改装した建物は幾つかの部屋があり、展示できる空間になっている。スペース名となる『ミグラード』は、エスペラント語(世界共通語)で「渡り」を意味しており、先日までプレオープンで開催されていた写真展では、これまで羅臼で撮影されてきた写真が紹介された。羅臼に魅了され、また写真に込められた想いに共感した方々が国内外を問わず、まるで渡り鳥のように羅臼へ何度も訪れていること、これからもまた訪れてもらいたいという願いを込めて名付けられたそうだ。短い滞在時間だったが、私もまた訪れたいと思った。そして、これから訪れるであろう人たちに向けて『ART BRIDGE』を置いていくことにした。
羅臼からの帰路で、斜里にある『メーメーベーカリー』に寄る。天気がよければ全長18キロほどの直線道路、通称「天国へ続く道」と言われる絶景スポットがどれかも分からない吹雪の中、車を走らせる。こじまんりとした店内にはカフェスペースもあり、何冊かの本が置いてある。その中のひとつー小さな発見、わたしの知床―と書かれた「シリエトクノート」を手にする。知床の語源のアイヌ語で「地の果て」を指すシリエトクという不思議な響きの言葉と確かにノートのようなサイズのこの冊子には「地域の隠れた文化を取材で掘り起こす」という活動モットーがぎゅっと詰まっていた。この小さな本と一緒に大きな『ART BRIDGE』もメーメー文庫に加えてもらうことになった。

こうして沖縄ネットワーカーの私の初回レポートはまさかの北海道編となる。次回こそ沖縄!になるかどうかは本人すら分からないですが(笑)楽しみにしてください。
『メーメーベーカリー』
町田恵美(フリーランスエデュケーター/コーディネーター)
1981年沖縄県生まれ。沖縄県立博物館・美術館の教育普及担当学芸員を経て、今春よりフリーとなる。沖縄を拠点に、興味関心の赴くまま県内外を行ったり来たりしながら、沖縄(との関わりなど)について考えている。夏に行われるあいちトリエンナーレ2016コラム展示「交わる水―邂逅する北海道/沖縄」共同キュレーター。Okinawa artist interview projectメンバー。

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