「旅する編集室:多孔質のデザイン」トークレポート①
更新日:2018.02.07
2017年11月28日(火)〜12月16日(土)まで、大阪・肥後橋にあるCalo Bookshop & Cafeにて、作品展「POROUS ーTransit Republic 旅と校正2017 / proofreader traveler 2017」を開催しました。
その会期中にFLAG studioで行われた、関連トークイベントのレポートを4回にわけて掲載します。


POROUS Transit Republic 旅と校正2017 / proofreader traveler

関連トークイベント「旅する編集室:多孔質のデザイン」
日時|11月29日(水)19:30〜21:00
場所|FLAG studio
登壇|後藤哲也(デザイナー、OOO projectsディレクター)
   港千尋(写真家、著述家、Art Bridge Instituteディレクター)




第1回
「POROUS Transit Republic 旅と校正」とは?



港 |あらためまして、みなさまこんにちは。今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。今日のトークのテーマ「POROUS(ポーラス)」の意味については後藤さんとの対談で紡いでいきたいのですが、Calo Bookshop & Cafeでの展示が昨日オープンしたばかりですので、まず初めにそちらの紹介させていただきたいと思っております。
私がディレクターをつとめるArt Bridge Instituteは、日本全国にたくさんあるアートコレクティブやアーティストの取り組みの間に、橋をかけていくことを目的に活動しています。半年に一度、活動をまとめた『ART BRIDGE』という大判の機関誌を発行してきました。
今回の展示は、その『ART BRIDGE』の特別号という形式をとりまして、実際の判型で刷られた色校正紙を会場に展示しています。

Calo Bookshop & Cafe|Osaka
Calo Bookshop & Cafe|Osaka
一枚の校正紙に、見開きが4ページずつ入っています。実際に面付けするときには上下が反転するのですが、今回は展示用ということで、印刷会社さんが気を遣ってくれました。
ウランバートルからはじまって、佐渡島、音威子府、バンクーバー、チェジュ島、台南、6つの土地を巡って撮影した写真とテキストが掲載されています。

実は、2017年3月に発行した『ART BRIDGE』の最新号はロサンゼルス特集でした。キュレーターやアーティストとロサンゼルスに行き、そこで展覧会をつくったり、リサーチをしました。ちょうどドナルド・トランプが大統領に就任するタイミングにあわせて、みんなでメキシコのティフアナという国境のまちにも行きました。新聞の一面が、どれも壁の写真だったのが印象に残っています。いくつかアーティストのスタジオを訪ねて、作品を借りてはロサンゼルスに戻って展示しました。
Photo by Kio Griffith / Tijuana
Photo by Kio Griffith / Tijuana
それをディレクションしてくれたのが、ロサンゼルスと日本を行き来しながら活動している、アーティストでキュレーターのキオ・グリフィス(Kio Griffith)です。今回の展示に合わせて、キオ・グリフィスがデザインしたアートジンも配布しています。
どうしたらポーラス的なジンにできるかいろいろと考えまして。紙を厚手にして自立できるようにし、立体的なジン、三次元のジンにしました。ピンク色のサークルにそって穴をあけると、ちょうど穴から月が見えたり、洞窟壁画が見えたりするようになっています。いくつか組み合わせがあるので、いろいろ試してください。


後藤|昨日、見てきました。シンプルな構成でしたが、読み解くのに時間がかかりました。実は僕もデザインの展示を企画中なのですが、そこでは移動する編集室をつくりたいと思っていて、通じるところがありました。
伺いたいのですが、校正刷りを展示した後の展開はどのように考えているのですか?あえて完成物ではないものを見せることで、鑑賞者に伝えたいことなどもあるのでしょうか?


港 |僕は80年代から、写真家や著述家としてさまざまな雑誌に寄稿してきました。印刷や編集に携わったことがある人はわかると思うのですが、本来は色校正の段階ではほとんど直せないのです。当時は神聖なもので、見せても触らせてももらえないくらいだった。今はだいぶ状況が変わっていると思いますけれど、ワンアンドオンリーの存在で、届いたときというのは独特なものがありました。念校が出ないときはこれで最後ですから、とても緊張するわけで。一方、ほぼ完成形が見えるものでもあるので、期待感というのかな?そういう相反する感情が、その場を満たします。
特に僕の場合は写真集でしょうか。一回限りの真剣勝負のような、特別な気持ちを引寄せたかった。それから校正紙は指示を出すものであって、永遠に完成系に辿り着かない不思議なものですよね。写真でいうとネガに近い、中間生成物です。


後藤|校正紙のような途中段階のものを見せることで、鑑賞者は完成されたものを見るという行為ではなく、旅のプロセスに参加するような。まさに「旅」というテーマに、印刷物が完成するまでの行程も入っているような感じを受けました。


港 |そうですね。ぜひ壁に近付いて、じっくり見てほしいと思います。それなりに情報量もあります。今回は文字数を抑えていますが、普段の『ART BRIDGE』は、薄い単行本一冊くらいの文字量があるんです。ギリギリまで詰めれば、見開きページに8000文字くらい入るメディアです。

<つづく>