「旅する編集室:多孔質のデザイン」トークレポート②
更新日:2018.02.13
2017年11月28日(火)〜12月16日(土)まで、大阪・肥後橋にあるCalo Bookshop & Cafeにて、作品展「POROUS ーTransit Republic 旅と校正2017 / proofreader traveler 2017」を開催しました。
その会期中にFLAG studioで行われた、関連トークイベントのレポートを4回にわけて掲載します。


POROUS Transit Republic 旅と校正2017 / proofreader traveler

関連トークイベント「旅する編集室:多孔質のデザイン」
日時|11月29日(水)19:30〜21:00
場所|FLAG studio
登壇|後藤哲也(デザイナー、OOO projectsディレクター)
   港千尋(写真家、著述家、Art Bridge Instituteディレクター)




第2回
アジアのデザイナーを紹介するダイレクトリー『YELLOW PAGES』



後藤|僕には2つの肩書きがありまして、一つは近畿大学でデザインを教えています。もう一つは、OOO projects(オー・プロジェクツ)という会社をしています。Out of office projectsの略なのですが、OOOと書きます。西天満にスタジオ兼展示スペース「OOO」をスタートさせたのがはじまりです。大学の仕事の誘いがあって、一度スペースは閉じてしまったりはしたのですが、いまはここFLAG studioの企画運営の委託なども受けています。
OOOには、そこになんでも入るよう伏せ字としての意味もありますし、ドットのような意味合いもあります。いくつかのものがくっつきあって、一つのイメージになるような。自分一人が出来ることではなくて、誰かとくっついてできるようなものや、何かを埋めていくことでできるようなもの、それがOOO projectsのプロジェクトに一貫していることのように思います。

Yellow Pages|idea
Yellow Pages|idea
今日のトークで紹介する『YELLOW PAGES』には前段があって、日本タイポグラフィ協会の機関誌がきっかけではじまりました。僕は万博にあったIMI(Inter Medium Institute)の卒業生なのですが、グラフィックデザイナーの奥村昭夫さんやIMIの卒業生らと、関西でこの機関誌を作ることになりました。機関誌は団体の内向きなものになりがちですが、外向きの情報も扱えるようなメディアにしたいと話し合い、ヨーロッパやアメリカのグラフィックデザインを扱うメディアは多いので、あえてアジアに目を向けたものにしようと。アジアのグラフィックデザインやタイポグラフィについての情報はほとんど入ってこなかったので、アジア7都市を巡り、現地のデザイナーにインタビューをする企画をたてました。
そのときにたくさんのデザイナーに会いましたが、いっそのこと一人に絞って、その人から見えてくる都市の状況や、ヨーロッパ中心のグラフィックデザインがいかにアジアで翻訳されているのか、もしくは翻訳されていないのか、そのあたりをじっくりと紹介できるような企画ができないかと。そしてはじまったのが、雑誌『アイデア』での連載『YELLOW PAGES』です。

これまで、香港、台北、北京、ソウル、バンコク、ホーチミン、シンガポールを巡りました。自分自身で訪ねて行って、デザインと書くこと、両方やっていました。一日とか半日とか時間をもらって、スタジオで話を聞く。そのあとで一緒にご飯を食べに行ったり、飲みに行ったりもしました。
デザイン誌のインタビューというと「インスピレーションは何ですか?」とか、「どういうデザイナーに影響を受けましたか?」とか、スタイルの話に終始してしまうことがあるので、日常の話や政治的な話題についても質問しました。この頃だと香港は雨傘運動、台湾はひまわり学運をやっていた時期で、政治的な問題に対してグラフィックデザイナーは何ができるのかとか、そういう話も出ました。
タイトルの『YELLOW PAGES』は、アジアのデザイナーを紹介するダイレクトリーということで、電話帳の「イエローベージ」と黄色人種の「イエロー」をかけています。白人デザイナーたちからしたらポリティカル・コレクトネス的に発音しにくいタイトルのようですが、インパクトはあったようです。日・英のバイリンガルなので、欧米のデザイナーからもフィードバックをもらえました。


港 |それぞれの都市は社会的背景も異なると思いますが、特にインパクトのある都市はありましたか?


後藤|「アジアらしさ」を求めてやっていたのではなく、それぞれの地域がどのようにデザインを翻訳しているのかに興味がありました。韓国はオランダ、香港はイギリスの影響を強く感じましたし。いまやインターネットもあって、翻訳ではなく直訳のような時代性も感じました。
どの都市もグローバル化されていくなかで均質的ですが、ベトナムはこれから変わっていくだろう面白さがありました。26歳のデザイナーにインタビューしましたが、その若さですでにベテランとして扱われていました。資本主義が入ってからまだ短いので、そもそもグラフィックデザインがなく、社会主義的なプロパガンダが一般的でした。
それから、北京はまだまだアートブックとしてのブックデザインの需要があり、面白い動きを感じました。


港 |東アジアや東南アジアだと、漢字文化圏とそうでない文化圏がありますね。タイポグラフィ的な傾向はありましたか?


後藤|植民地化されていないこともあって、タイには独自の文字文化はあります。ただタイポグラフィ的にいうと、東南アジアはかなりラテン・タイポグラフィの影響下にありますね。
漢字だけの文化圏で生きている人にとっては、日本のデザインは平仮名やカタカナが入ることで空間が生まれ、ポエティックな印象を受ける人もいるそうです。