舩木翔平
Shohei Funaki
八王子市由木地域の農業が身近にある暮らし
現在、八王子市由木地域は、多摩ニュータウンの一部で、マンションや住宅が立ち並ぶいわゆるベッドタウンです。元々、農業や酪農が盛んであったこの地域が多摩ニュータウン開発によって様変わりしました。しかし、その開発の中、由木地域の酪農家が中心となり、開発反対活動が始まりました。全てを住宅地にするのではなく、農業や酪農、里山を残し、新しく移り住んでくる住民とお互いに共存出来るような町づくりを提唱しました。その後、4ヘクタールの農地や酪農施設は守られ、多摩ニュータウン開発は、終わりました。2012年からその残された農地で新たに活動を始めたのが株式会社FIOです。FIOで様々なイベントや企画行い、多くの人たちがこの地に集まるようになった活動をご紹介します。
01 ニュータウンに残された奇跡の農村風景
多摩ニュータウンの幹線道路からトンネルを一つ抜けると、そこには、畑や酪農などの農村風景が広がっている。とても不思議な空間だ。そこでは、牛の臭いが漂い、夜になれば虫やカエルの声が騒がしい。多摩ニュータウンからは、全く想像できない環境がここにある。
多摩ニュータウンのある地域は、かつて、畑と山が広がり、農業・酪農・養蚕などを生業としていた地域だった。そこに突如「多摩ニュータウン開発計画」が始まり、多摩市、八王子市、町田市、稲城市にまたがる巨大な住宅開発が始まることになった。次々と道路や鉄道が整備され、住宅が立ち並んでいった。そんな中、多摩ニュータウン19住区と言われる地域のみ、酪農家が中心となる土地所有者の方々が「農業や酪農があるまちづくり」を訴え、単一的な住宅開発を反対した。その結果、約4haの畑と山などが開発から逃れ残された。今から約30年前の出来事である。
私はここで、畑や元牛舎などを拠点に動き始めた。その始まりは、とても偶然のものだった。私が農業を新たに始めるにあたって、借りられる畑を探していた。そこでご紹介して頂いたのが、八王子市堀之内の酪農家の鈴木さんだ。鈴木さんと話した時に、鈴木さんが私に対して「どんな農業やりたいの?」と聞いた。「私は、畑でただ単に野菜作りをしたいだけではありません。農業が地域との接点を作り、その地域が盛り上がるような仕事をしていきたい。」と話した。そして、畑を借り、農業を始めることになってから、訪れる方々や農業に興味を持ってくれる方に多摩ニュータウンの開発の経緯や由木村、都市農業の現状などを伝えていった。伝えることによって、この地域の特殊性こそが八王子市堀之内で農業をやっている意義であり、魅力となっていく感じがする。

町は、時間が経てば、風景が変わり、人も変わり、雰囲気も変わっていく。しかし、過去の出来事は、変わらない。良い事、悪い事、さまざまな全ての出来事があって、「現在」がある。だから私は、ここの歴史を大切に、活動していきたい。

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