原亜由美
Ayumi Hara
「写真の町シバタ」の活動を通じたアートにまつわる出会い・出来事・気づき
新潟県新発田市は、城下町から連隊の町として栄え、明治期に広大な商店地区が興隆し、近代文化を象徴する写真館が多く軒を連ねました。戦火を逃れたため、東京など大都市圏では失われた写真草創期の貴重な乾板写真が、今も商家などに眠っています。「写真の町シバタ」は、町のたからものである写真の物語を紐解き、記憶と土地を新たに結ぶことを目指し、2013年から活動をしている市民有志団体です。「写真の町シバタ」実行委員として、この活動を通して出会ったさまざまなエピソードや出来事、他団体との交流などを紹介していきます。
01 夏と記憶の欠片
 夏は“お店まわり”の季節である。“お店まわり”とは、商店を訪ねてアルバムからポスター用写真をお借りする一連のやりとりのことだ。わたしたちは、新潟県新発田市で「写真の町シバタ」という活動をしている。秋に同名のイベントを主催し、メイン企画「まちの記憶」では、店先に額装した写真ポスターを飾ってもらっている。「まちの記憶」参加店は100を超え、明治期に興隆した広大な商店地区に「まちの記憶」が立ち表れる趣向だ。
 例年「もっと早く“お店まわり”を始めよう」と思うが、取りかかる頃には既に夏になっている。10人ほどの実行委員で手分けをして写真を集め、さらに100字にまとめて掲載するコメントのために聞き取りもする。日盛りだと冷たいお茶を出してくださるお店もある。お茶をいただきながらアルバムを眺め、思い出話を聞いていると、いつかの夏にタイム・スリップしたような気持ちになる。夏休み、お盆、夏祭り、そして“お店まわり”。新発田には新しい夏の風物が一つ増えたようだ。
 「写真の町シバタ」は東日本大震災の年に始まり、今年戦後70年の節目に5年目を迎えた。記憶をテーマとしたプロジェクトにおいて、こうした数字の符牒は、偶然ながらも必然なのだろう。5周年を記念し、「アサヒ・アート・フェスティバル2015」の開幕イベントも兼ねて、過去出品作を市内5ヵ所に展示する「まちの記憶」回顧展を6月に開いた。関連イベントで、写真の町シバタ発起人で美術家の吉原悠博さんと、AAFネットワーク事務局長の芹沢高志さんとの対談が、創業140年を超える吉原写真館で期間中に行なわれた。対談で、芹沢さんの「まちの一角が急に取り壊されると、記憶を失ったように感じられる」という言葉が印象に残った。記憶は物質に大きく依拠している。写真は記憶の物質だ。記憶の欠片を、足を使って夏に集める。すると秋に、新しい「まちの記憶」に会える。今から楽しみだ。

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