Across The Waters
オンライン英語版を含めるとレーベル第4弾となる『Across The Waters』港 千尋 著を刊行を記念し、著者・港千尋の写真展を東京・蔵前のiwao gallery にて、Art Bridge Institute主催で開催しました。収録作を中心に著者のセレクトによるプリント作品の展示と併せてABI+P3の書籍販売も行ないました。『Across The Waters』は会場先行販売として、ご来場の皆様に一足先にご覧いただく機会となりました。

『Across The Waters』港 千尋 著
— 旅の始まり、イメージの起源へ。

ブラジル、赤道地帯、ダブリンの一日から洞窟へ、時を遡るイメージの旅、全4章。未発表含む写真52点(1982-2004)と書き下ろしテキスト(2022)を収録。
Brazilian Moment / Dog Day Equator / Chromatic Citizen / All Is Always Now

著者:港 千尋(写真・文)
デザイン:岡本 健 +
仕様:中綴じブックレット4冊 各32頁 28頁 24頁 20頁
   三方背ブックケース付 / B4変型
価格:5,400円+税
発行日:2022年5月12日
発行元:ABI+P3
販売元:Art Bridge Institute
レーベルサイト:https://www.abip3publishing.org/
購入サイト:https://artbridgeinstitute.stores.jp



●紹介文

フーアの夢
写真家はフーア(道)を自分の夢に引き込み、フーアは写真家を遠く消え去った時へ引き連れてゆく。陶酔に浸りながらフーアを彷徨う者は、目に映る過去の遺物を現在のように目醒めさせ、時には歴史の瞬間に立ち合う。
写真は誕生した時は目醒めだった。しかし200年が経った今から見ると、写真は目醒めているという夢を見ていたのかもしれない。
1982年のブラジル熱帯雨林を水源とする漂流(ドリフト)の証である港千尋の『Across The Waters』は、時そのものである。半世紀近い時の経過の中にしか、これらの写真は存在しない。憧憬と喪失、郷愁と悲哀がないまぜになった「遥けさ」の中で写真は光輝を授かり、水の流れのように現在というページへ浸み出してくる。
—伊藤俊治(美術史家/東京藝術大学名誉教授)


ああ、これが港千尋という精神の、奥底に広がった地下水脈なんだな……。精神と風景が分かちがたくもつれあって、イメージの奔流となっている。旅をしなければ生きていけない我々のような人にとっては、何の説明もいらないだろう。それは4つの、バラバラに、たまたま遭遇した風景だが、すべては地下を流れる水でつながっている。いや、この『Across The Waters』で、それらがつながっていたことを、今、あらためて認識しているのか? 現像というのも面白いね。忘れていた、あるいはそこにあるのに気づいていなかったイメージが、徐々に現像液の中に現れて、ああ、そうだったのかと驚かされる。そしてこの水脈に、深く感謝するわけだ。しかしこれは、一個人に限られた、個々別々の水脈なのだろうか?
—芹沢高志(P3 art and environment/統括ディレクター)


●著者プロフィール
港 千尋(みなと ちひろ)
1960年神奈川県生まれ。写真家。世界を移動しながら創作、研究、執筆、発表を続けている。 国際展のキュレーションなども手がけ、あいちトリエンナーレ2016では芸術監督を務めた。写真展「市民の色 chromatic citizen」で2006年度第31回伊奈信男賞受賞。写真集に『瞬間の山』(インスクリプト 2001)『文字の母たち』(インスクリプト 2007)など。『風景論—変貌する地球と日本の記憶』(中央公論新社 2018)で2019年度日本写真協会賞を受賞。近著に『現代色彩論講義─本当の色を求めて』(インスクリプト 2021)、『写真論—距離・他者・歴史』(中央公論新社 2022)。多摩美術大学情報デザイン学科教授。
撮影 齋藤彰英