インターンプログラム 活動レポート
インターンプログラム 活動レポート⑤

この日は、8回目のブリッジトークのゲストとして、「いいたてミュージアム」の運営に携わっていらっしゃる、福島県立博物館学芸員の小林めぐみさんがいらしてくださいました。

いいたてミュージアムは、東日本大震災(3.11)の時の原発事故によって比較的離れた場所であるにも関わらず、気候条件や土地柄、放射能汚染がすすんでしまった飯舘村という村にまつわるものです。厳しい自然条件の中、村に住む人々は村をみんなのものとして捉え、協力して村づくりをしていました。そんな豊かな情景があったにも関わらず、住むことができなくなってしまった村の「記憶」を記録するため、いいたてミュージアムは活動しています。いいたてミュージアムは、飯舘村でのご縁を大事に村に寄り添い、飯舘村の復興とは何かを模索しながら活動をしている「いいたてまでいの会」の取り組みのひとつです。「までい」というのは、両手を意味する古語からきており、現地の方言で「手間ひまいとわず」「丁寧に」という意味だそうです。いいたてミュージアムの活動は、まさに「までい」なもの。ひとりひとりにお話を聞いて、その人自身の語る「言葉」と暮らしの象徴である「もの」を集め、展示しています。集められたモノは、例えば個人のアルバムの中にあった写真や普段の生活の中でチラシを使って作ったゴミ箱など、本来ならあまり公の場に出てくることのないような「もの」です。それをあえて展示するのは、話をきくだけでは個人のストーリーにとどまってしまう可能性のあることを、「もの」として見ることで自分たちのこととして考えてほしいという思いによるそうです。

アーティストの岡部昌生さんのフロッタージュプロジェクトについても話はつながっていきました。アートという言葉は都合良く使われてしまいがちな言葉ですが、何者でもないアーティストが入ることによって、その土地の記憶がなにげないところから浮かび上がってくるといった趣旨の、港ディレクターの話がありました。話すきっかけや場をつくることによって、形のある結果を求めるのではなく、何かを一緒に探しにいくための余白をつくるアートの側面を大事にしていきたいとあらためて感じました。

この日の小林さんは、会津の桐下駄を履いていらっしゃいました。下駄は歩くたびに、指の付け根がぎゅっとし、一歩一歩の実感と自らの足で歩いているというリアルな感覚があります。「福島が何か未来に役に立ったとき、やっと報われる」という小林さんの言葉がありましたが、いいたてミュージアムのような、まさに下駄で歩くときのような自分たちのリアルな感覚を大事にした活動が、未来へつながっていくのではないかと思います。


高野英江(ABIインターン)
11月19日(木) 19:00〜21:00
3331 Arts Chiyoda 3F アーツカウンシル東京ROOM302

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