Minatomachi Art Table, Nagoya[MAT, Nagoya]
ネットワーカー・沖縄支部 vol.05
町田恵美(フリーランスエデュケーター/コーディネーター)
港まちポットラックビル 1Fラウンジスペース
今年の夏は、愛知によくいた。「あいちトリエンナーレ2016」でひとつ企画に関わらせてもらっていたのだ。この時期、愛知では他にも幾つかイベントが行われており、名古屋港に隣接する港まちのエリアでは、9月の中旬から一か月ほどの会期でアッセンブリッジ・ナゴヤが開催されていた。
音楽と現代美術のプログラムで構成されたアッセンブリッジ・ナゴヤのアート部門は、Minatomachi Art Table, Nagoya[MAT, Nagoya]が手掛けた。MAT,Nagoyaは、近くに貨物船などが寄港する港があり、古くからの商店街が残る、この港まち地域をフィールドにしたアートプログラムなどを行う。商店街の一角にある旧文具店ビルを改装したMAT,Nagoyaの活動拠点、港まちポットラックビルは、展示だけでなく、プロジェクトやイベントも行える設えになっている。1Fのラウンジには本棚があり、腰かけてくつろげるようになっている。ART BRIDGEも読むことができる。
アートによる地域活性化が蔓延するなか、MAT,Nagoyaの掲げる「アートそのものは、まちを変えるためには存在していません」という考えは、地域としっかり向き合う構えのあらわれだと思う。まちがアートを受け入れる、すぐにとはいかないだろうけど、じわじわと浸透して、アートとの出会いを楽しむ関係を築いていく「まち」になるのではと期待する。
実際、まちなかで開催されている展覧会「パノラマ庭園―動的生態系にしるすー」をマップ片手にまわっていたとき、番号が振られている作品が見つけられず、近くにいた地元の方に尋ねると「これこれ」と慣れた口調で教えてくれた。きっと何人にも聞かれているんだろうなあと思わず顔がほころぶ。
また、参加作家のひとり、下道基之の《見えない風景》は、展示室に置かれた言葉の地図を頼りに、言葉が示す目印を探しながらまちを散策する。その風景は、どこかヘンテコで可笑しい。見慣れて日常と化していることを、改める。疑ってみる。視点を変える、そのことで、いままで見えていなかった風景が現れる。新しい風景との出会いは、「まち」を楽しむ術として効果的といえるだろう。
下道基之《見えない風景》、言葉の地図より「見えない窓」
町田恵美(フリーランスエデュケーター/コーディネーター)
1981年沖縄県生まれ。沖縄県立博物館・美術館の教育普及担当学芸員を経て、今春よりフリーとなる。沖縄を拠点に、興味関心の赴くまま県内外を行ったり来たりしながら、沖縄(との関わりなど)について考えている。あいちトリエンナーレ2016コラム展示「交わる水―邂逅する北海道/沖縄」共同キュレーター。Okinawa artist interview projectメンバー。

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