The Reading Room
ネットワーカー・沖縄支部 vol.04
町田恵美(フリーランスエデュケーター/コーディネーター)
tomariでのイベントの様子
何人かから連絡があった。―「タイのキュレーターが沖縄にリサーチに行くんだけど連絡先を教えていい?」ふだんなら「もちろん」、と即答するのだが、ちょうど幾つかの案件が重なっていて少し返事をためらっていた。でも、いつ来るか日程くらいは聞いておこう、と思い直して返信をした矢先、「もう来てるみたいだよ」と別口から連絡があった。数日後、急きょ開催が決まったというイベントの案内を本人からもらい、改めて挨拶を交わした。
タイで「The Reading Room」(以下、Reading Room)というスペースを運営するkyoさんは、半年間日本のオルタナティブスペースの調査を目的に来日していた。全国幾つかのスペースを訪ね歩き、人に会い、取材を行う。間もなく半年の調査期間が終わるという頃に沖縄に来た。
イベントを実施したtomariというスペースは、前身のOCAC(沖縄コンテンポラリーアートセンター)から名称を一新して、複数のメンバーで共同運営している。メンバーのひとりが彼女と知り合いで、Reading Roomの活動とタイの社会状況を紹介するトーク内容だった。
誰でも本を借りることができて、様々なイベントを行うReading Roomの活動もとても面白かったのだが、常に軍の監視の下にあるタイのお国事情に驚いた。タイでは頻繁にクーデターが起こり、検閲の対象はアートにも及ぶ。実際、Reading Roomでイベントを行った人のなかにも、国からマークされている人がいるという。そういった現状にありながらも、いやだからこそ自分たちの表現活動を行える場所としてReading Roomは彼らにとって必要なのではないか。
大きなものに取り込まれてしまいそうになったとき、しっかりと立っていられる足場を確保しなければいけない。時にそれが困難に思え、どうしていいかわからなくなるときがある。それでも従うではなく、抗うという行為の背景には譲れない何かが存在するのだ。
滞在中に辺野古や高江に足を延ばしたという彼女の目には、沖縄の現状はどう映ったのだろう。そんなことを思いながら、沖縄のことをタイの人たちにも見てもらえたらと辺野古の写真が載っている02を含むART BRIDGEを渡した。今頃、Reading Roomの本棚に並べられ、誰かの手に取ってもらえているだろうか。
台湾料理店で朝ごはん
町田恵美(フリーランスエデュケーター/コーディネーター)
1981年沖縄県生まれ。沖縄県立博物館・美術館の教育普及担当学芸員を経て、今春よりフリーとなる。沖縄を拠点に、興味関心の赴くまま県内外を行ったり来たりしながら、沖縄(との関わりなど)について考えている。あいちトリエンナーレ2016コラム展示「交わる水―邂逅する北海道/沖縄」共同キュレーター。Okinawa artist interview projectメンバー。

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