ゲティセンターミュージアム
ネットワーカー・沖縄支部 vol.06
町田恵美(フリーランスエデュケーター/コーディネーター)
John Tainさん(右)とIdurre Alonsoさん(左)
Art Bridge Institute主催の「TRANSIT Republic」に参加するため、一月下旬アメリカ、ロサンゼルスに渡った。プロジェクトの全容については『ART BRIDGE05』に詳しいと思うのでそちらを楽しみにされたい。その一環として行われたリサーチの際に、雑誌を持参した幾つかの場所と人について備忘録を兼ねて記しておこうと思う。

小高い丘の上に建つゲティセンターミュージアム(以下、ゲティ)は、一日あっても足りないといわれるほどの収蔵品を誇る美術館だ。展示スペースもさることながら、今回はスタッフであるキュレーターのジョン・テイン(John Tain)さんの案内でバックヤードを見せてもらう。眺めのいいオフィスや充実した書庫、彼の専門とする写真のアーカイヴが揃った収蔵庫など、その規模に驚くばかりだ。スタッフルームでもうひとりキュレーターのイドゥレ・アロンソ(Idurre Alonso)さんが加わり、彼女が現在企画をすすめている展覧会の話などを聞く。

ふいに彼女から質問があった、「あなたにとってエデュケーション(教育普及)とは?」。ゲティではエデュケーション部門が置かれていない。彼女はキュレーターでありながらエデュケーションの重要性を十分に認識して、自身の立場でできることを考えていた。
教育は誰にとっても平等にある権利である。しかし、現実ではそういかない場合も多いことも理解している。そして、学校ではできないことを美術館が担うことができればと以前から思っている。それは、館に足を運ぶ人を増やすだけではなく、それが叶わない人たちに対しても館の外で芸術活動を広めていく取り組みを重視したいという思いにつながる。(もちろん館内にて作品を鑑賞する機会も重要であると承知している。)。アウトリーチと呼ばれる、地域の人と共同して進めるプログラムや、学校に出向いて授業やワークショップを行う試みがある。その体験は、一過性のものに過ぎないだろうか。私はそうは思わない。そこで得たことを経験とし、すぐには効力を発しないとしても記憶に刻まれ、後からきっと思い出すと確信している。何にしても、出会うのと出会わないのとでは結果が異なると思う。だとしたら、ひとりでも多くの人が芸術に出会う機会があればと願うのだ。

ART BRIDGEの雑誌という形態も「移動」するという意味では、普及の理に適っている。この雑誌を介して、こんな遠くまで来た。そして、届けると同時に私自身が多くのことを受け取っていることを実感するのだ。
ゲティセンターミュージアムからの眺め
町田恵美(フリーランスエデュケーター/コーディネーター)
1981年沖縄県生まれ。沖縄県立博物館・美術館の教育普及担当学芸員を経て、今春よりフリーとなる。沖縄を拠点に、興味関心の赴くまま県内外を行ったり来たりしながら、沖縄(との関わりなど)について考えている。あいちトリエンナーレ2016コラム展示「交わる水―邂逅する北海道/沖縄」共同キュレーター。Okinawa artist interview projectメンバー。

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