アイソメ
ネットワーカー・東京支部 vol.02
高野英江(エデュケーター)
7月下旬に、インターンプログラムの一環として、根津にあるコミュニティスペース「アイソメ」にお邪魔してきました。アイソメは関東大震災を乗り越えてきた築100年ほどの6軒長屋の一角にあります。周辺には古民家を改装して出来たギャラリーやお店が集まり、昔の街並みの残り香が感じられる場所です。私もよくお参りに行く根津神社の近くに位置し、年に一度行われる根津神社例大祭の神酒所になる場所でもあります。そんな町にとって拠点となる場所に住む人がいなくなってしまった時に、その役割を守っていくため、アイソメができました。
この日は、アイソメの運営メンバーでもある、建築家の栗生はるかさんにご案内いただきました。栗生さんは、子どもの頃に神田祭に参加し、道路としてしか使われていなかった公共空間が1日にして「お祭り」の場に転換するという体験から、公共空間を最大限豊かに使うことを、研究してきたそう。その中でも、地域の魅力を建築的視点から再発見し発信していく団体「文京建築会ユース」として、地域のコミュニティ拠点である「銭湯」にスポットを当て、その保存・再生活動をしています。実測をして図面に残したり、廃業前の銭湯の見学会を開催し記録をとったり、銭湯にあったタイルやペンキ絵を保管したりとその方法は様々です。栗生さんが仰るには、銭湯には会社仲間やご近所さんとも違う独自のコミュニティがあり、その場所がなくなるということは、その人たちが会うことのできる場所がなくなってしまうという意味でもあります。しかも銭湯帰りの人が寄っていくことで周りのお店が成り立っているなど、銭湯を中心に街の生態系が出来上がっているのだそうです。色々な「点」があることで出来る「面」を保存していくことが大事だという、栗生さんの言葉が印象に残りました。
アイソメのスペースは、決まった使い方はなく、子どものワークショップや、大人向けの勉強会が行われたりと、使う時や人によってその役割を変えていきます。こうした余白のある場所をつくることによって、出来るだけ多くの人と同じ場所を愛でていくことが出来るのではないかと思いました。昨今、物があふれていて、ほしいものは自分だけで持つことができる時代です。アイソメは、物や場所、その背景にある歴史や関係性をみんなで守り、一緒に愛でていくということの心地よさを感じさせてくれる場所だと思います。そんなアイソメにも「ART BRIDGE 03」をお届けしてきました。アイソメを通して「ART BRIDGE 03」もたくさんの人に共有していただけたら嬉しいです。
高野英江(エデュケーター)
1989年茨城県生まれ。2012年、お茶の水女子大学文教育学部人間社会科学科卒。
2014年、東京大学大学院教育学研究科総合教育科学専攻生涯学習基盤経営コース修了。在学中に、生涯学習・社会教育を勉強する傍ら、アートプロジェクトに関心を持つようになる。2014年より川崎市岡本太郎美術館にて、教育普及事業を担当。2015年度より、Art Bridge Institute(ABI)のインターンとして活動。2016年度は、ネットワーカーとしてABIの活動に関わるようになる。

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