2020-summer-story
リレーコラム
同時代 / 日常 / 新様式
2020年7月、新型コロナウイルスによって私たちの日常が揺らぎ始めて半年が経つ。
感染拡大を防止するための「新しい生活様式」のなかで、私たちは何かをつくることができるのだろうか?
各地を旅し、メディアをつくり、人や物の間に「橋(ブリッジ)」を架けてきたArt Bridge Instituteのメンバーが、この6ヶ月を振り返る連載。
01 8月5日 東京
台南芸術大学のマンゴーの花 2020年3月に台湾の友人が送ってくれた
2月にこれから何が起こるのか先の読めない不安が大きくなり、4月になると佳境を迎えていた美術展の行く先や動き方についていくつもの判断に迫られた。そして8月になり「本当に長期戦になるのだ」という実感とともに訪れた虚脱感。

とにかく揺れ動かされた半年間。その間に、私たちのなかにはコロナ時代を生き抜くための「新しい生活様式」が定着しつつあったりもする。身体的距離感、人混みの回避、移動の制限、そして会議や会合、イベントやレクチャーはほぼオンラインになった。
混雑緩和のために予約制を導入した美術館は観覧に集中できるし、移動にストレスのないオンラインミーティングは便利だ。職種によってはオフィス不要論も高まっていると耳にする。これをきっかけにスタンダードになる様式も出てくるのだろう。こうした変化は私たちが共有していた「日常」そのものにも大きな変化を及ぼすはずで、この流れに身を委ねて、できることをやらなければならないと前向きに考える日もある。

Art Bridge Institute(以下、ABI)はこれまで、メディアを通じて様々な人や場所にブリッジをかける活動をしてきた。発足して今年で6年目になるが、拠点と呼ばれるような開かれた場所を運営したことがない。場所のかわりに機関誌「ART BRIDGE」(以下、ART BRIDGE)というメディアを持ったが、活動のなかで「会う」ことを蔑ろにしていたわけではなく、むしろ「会う」ことの継続に悩み、そしてART BRIDGEの制作過程やそれを手渡しで渡す行為でしか生まれない熱量の中に、共感や共創の種が生まれる可能性を信じていたところもある。
ART BRIDGEバックナンバーのタイトルが示すように、これまで紹介してきたアートプロジェクトや芸術祭の多くは、国内外のネットワークや、身体性を大切にしたサイトスペシフィックなプログラムも多い。その場所に足を運ぶこと、集い共感すること、境界線を越えること、こうした行動が生み出してきた集合体としてのエネルギーや化学反応が、様々なリスクを回避しながら変わらず生まれえるものだろうか。一つの場所に集合体を生み出すブリッジをかける行為も、コロナ時代においては矛盾をはらんでいると言えばそうなる。

ビッグイシューが販売者の健康と生活費を確保するため、通信販売に切り替えたという新聞記事を見た。販売者の健康と生活を確保できた一方で、販売者自身が読者に対面販売することにより収入を得て自立するという事業目的とのバランスに課題を抱えているそうだ。ART BRIDGEと同じ手渡しでの配布に親和性を感じていたこともあり、目がとまる。
大きな前提が揺らいでいるそのなかに、ABIも新しい橋を立ち上げることができるだろうか。
新しい生活様式に身を委ねつつも、時々は立ち止まり、考えて行きたいと思う。


関川歩

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